それを言うなら、Googleの検索製品および利便性の向上担当副社長であるマリッサ・メイヤー氏だろう。同氏は1999年にGoogleに参加して以来、検索エンジンのインタフェースなど各種の設計を担当し、華々しい出世を遂げている。
メイヤー氏の担当は技術の開発から製品管理まで多岐にわたり、現在もGoogle Newsをはじめ、Google Health、Google Toolbar、Google Labs、Google Earthなど、幾つかの取り組みを統括している。ただし同氏はただ机に座ってプログラミングを行っているわけではなく、自ら顧客への説明にも臨んでいる。
12月3日にテレビ番組「Today Show」に出演し、検索キーワードのトップ10ランキングを発表したのもメイヤー氏だ。そして同氏は翌日には記者会見を開き、そうした検索キーワードの詳細を説明するとともに、Google Trendsアプリケーションに関するチュートリアルも行っている。
つまりメイヤー氏はGoogleの検索エンジンの設計に舞台裏で携わるだけでなく、世界最大の検索エンジンの顔として、広く世間に認識されているということだ。同氏は12月12日、米カリフォルニア州マウンテンビューの同社本社でeWEEKの取材に応じ、検索エンジンの設計と検索結果の妥当性をめぐる問題点やその解決策について話してくれた。
―― ブログ界では目下、PageRankをめぐる問題が最大の論争点の1つとなっています。Googleの広告プログラムから利益を上げている企業は、Googleの検索アルゴリズムの変更のせいで自分たちのサイトの評価に影響が及び、結果的に広告コストが引き上げられていると不満を訴えています。こうした人たちに対して、どのように説明なさいますか?
メイヤー氏 人々はオンラインで何かしらの情報を得るために検索を行います。中小企業のオーナーであれば、自社の存在を知ってもらうために検索エンジンを効果的に利用する必要があります。われわれもその点は理解し、尊重しています。そうは言っても、われわれはユーザーに最も妥当な検索結果を提供したいと考えています。ですから、ときにはPageRankを落とさざるを得ない場合もあります。例えば、何かしら小細工したデータを検索エンジンに提供しているサイトなどです。そうしたサイトは、自分のページにGoogleのボットがアクセスしていることを認識した上で、われわれに通常のユーザーに提供するのとは別の内容のページを戻してきます。
そうした細工が施されていると分かったからには、ルールも何もありません。われわれは提示されたページの内容に基づき、そのページが何に関するページなのかを把握し、それをインデックス化した上で、われわれの知識に基づき検索結果を戻しています。それなのに、提示されたページの内容が一般のユーザーが見ているものとは全く違うということになるのですから。内容は全く無関係な場合もあり、そうなればユーザーの検索の利便性を大いに損なうことになりかねません。ユーザーはリンクをクリックし、「このページとわたしの検索に一体どんな関係があるのか」と疑問に思うでしょう。ですから、このようなクローキング手法が用いられていることに気付いた場合、われわれはそのページを白紙の状態として扱うようにしています。そのURLにどういった内容の情報が置かれているのか、われわれには分からないからです。自分のURLに置かれている情報を教えてくれないようなサイトを、どうやって検索結果に含めようがあるでしょう? それでも、われわれはそうしたページを完全に排除するわけではありません。ただ非常に低い位置に掲載されるようにします。なぜなら、ユーザーが実際にそのURLで何を見せられるかが分からないからです。
―― 「われわれ」とおっしゃっていますが、それはそうした変則的な行為を見つけ出し、措置を講じる検索アルゴリズムがあるということでしょうか? それとも、クローキングなどの詐欺行為を見つけ出すのはアルゴリズムで、その報告を受け、PageRankを変えるなど何かしら具体的な措置を講じているのはGoogleのエンジニアということなのでしょうか?
―― 「Google本社にエンジニアが常駐し、システムの裏をかこうとしている人たちの証拠を見つけ出し、措置を講じている」と考えている人もいるようですが……。
メイヤー氏 それは残念ながら、Yahoo!の影響かもしれません。Yahoo!はインターネットの壮大なサクセスストリーの1つです。そしてYahoo!では、スタッフの一団がWebを閲覧し、情報をディレクトリごとに分類しています。そうしたYahoo!スタッフに関する記事を目にした人たちは、自分たちに提示される検索結果ページはすべて手作業でまとめられたものだと思ってしまっています。ですから、「MP3の検索結果ページは誰が担当しているのだろうか?」などと不思議に思ったりするのです。さすがにWeb管理者ぐらいになれば現実を分かっているのでしょうが、一般ユーザーの多くは、Googleでもそうしたスタッフが検索結果ページを手作業で作成し、「このサイトは第4位から第7位に移動しなければならない」といったことを判断しているものと思っています。実際のところ、Googleではそうした手作業は全く行っていません。
われわれは、検索結果ページが完全に客観的なものになることを重視しています。ですから、もし判断に人手を介すようなことがあれば、それは大問題です。クローキングはわれわれが注意しているシグナルの1つです。Googleボットを各サイトに送信する際には、われわれは常に通常のユーザーエージェントも送信するようにしています。双方を比較し、広告以外の部分まで変わっていることが確認された場合、そのサイトはクローキングを行っていることになります。それが判明した時点で、検索結果ページでのそのサイトの表示位置は引き下げられることになります。
―― 今あなたが一番重視しているのはどの領域ですか? 最近、ご自分の担当業務のなかで最も多くの時間を割いているのはどの分野ですか?
メイヤー氏 わたしは集中して一気に取り組むタイプのようです。普段は、スタッフが迅速に作業を進め、テストを行ったり、適切な変更を加えたりできるよう、常に全体の動きを管理し、把握するようにしていますが、ときには一層の注意を要する製品が登場する場合もあります。例えば、iGoogleもそうです。iGoogleは非常に急速に成長しているからです。
―― iGoogleの改善について、顧客からはどのような要望が寄せられていますか?
メイヤー氏 ページ遷移なしでGoogleガジェット(Googleのウィジェット)をもっと大きく表示させたいという要望があります。これは、もっともな意見です。切手サイズのビューでは小さすぎる場合も少なくないからです。テーマ(スキン)に対するユーザーの反応も良好です。ユーザーはもっと多様なテーマが提供され、パーソナライズ機能も充実することを望んでいます。そこで、われわれはもっとテーマを増やし、ユーザーにもその開発に参加・支援してもらう方法を検討中です。
そして、ユーザーから要望があるわけではないのですが、われわれは大きなバイラル効果についても考えています。つまり、わたしが自分のホームページに何かコンテンツを追加し、それを気に入ったとして、それをどのように友人と共有できるかということです。例えば、われわれはプログラミングの方法を知らないユーザーにも簡単にガジェットを作成してもらえるよう、Gadget Makerというツールを提供していますが、ガジェットが作成できたとして、次はそれをどのようにメールで送信するかが問題となります。
―― あなたは先日の記者会見で、Google Trendsに関連し、アプリケーションのAPIをオープンにする方針を明らかにされました。そうなれば、プログラマーはこのツールを自分のアプリケーションに組み込めることになります。ほかにも、公開を予定しているAPIはありますか?
メイヤー氏 Googleはオープン化には大いに賛成です。われわれのAjax用の検索APIは非常に人気が高く、Google Maps APIやGoogleガジェットのAPIも大いに人気を博しています。目下われわれが検討しているのは、これらのAPIすべてにわたって共通のテーマと言語をいかに編成できるようにするかです。それが実現すれば、Google APIのいずれか1つを使用できるようになれば、ほかのGoogle APIも実に容易に習得できるようになるはずです。今のところ、そうしたAPIはまだそれぞれ異なる開発者によりバラバラのスケジュールで開発されていますが、われわれは開発者がGoogle APIの基本的なフレームワークを理解するだけでそうしたAPIを統合的に利用できるような方法を検討中です。
―― あなたはプログラマーとしてGoogleに参加して以来、見事な出世を遂げています。プログラミングの世界と消費者相手の世界との違いをうまく管理していく上で鍵となっているのは、どのようなポイントですか?
メイヤー氏 だからこそ、われわれはコンピュータ科学者を製品マネジャーとして雇っているのです。なぜなら、「最高のインタフェースを提供するためには、技術的な基盤を理解し、それを分かりやすく簡略化し、ユーザーにとって使いやすいものにする必要がある」というのがわれわれの考えだからです。ですが、ときには妥協も必要となります。「この機能を付けずに、この製品をリリースすべきだろか? それで問題はないだろうか? その場合、製品はどのように機能し、どのようなルック&フィールになるだろう?」といった比較考量もときとして必要です。
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